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 !  必 読 事 項





キャラ設定について
鳴滝/弦麻
執筆:A氏
スクロールする前に必ず ココ を読んでね。

この弦麻は『女主人公』龍麻の父親で『男主人公』龍麻の父親の弦麻とは全くの別人です。
ここに出ている弦麻の弟・麻人はオリジナルですが、この人が後に主人公の義父になり、
それはA氏の書く全部の鳴瀧×弦麻に共通してます。


め る へ ん

 バタバタと忙しない足音と共に乱暴に鍵が開かれる。
「早く入れ」
 濡れそぼった学生服を脱がしてやりながら、部屋の中に小柄な身体を押しやると、鳴瀧冬吾も後を追うように入っていった。
 なめくじが這った跡を思わせる濡れたフローリングをわざと見ないようにしてタオルを取り出すと、リビングで困ったように立ち尽くす友人の元へと取って返した。
「ほら」
 頭からばっさりと被せると、友人−−緋勇弦麻はその合間からちらりと視線を上げた。
「悪い。床、こんなにして」
 ぽつぽつと今でも水たまりを作る自分の服を見下ろして、さすがにバツが悪そうに言う。
「……バスルームに直行してもらいたいのはヤマヤマなんだがな」
 その前にと、鳴瀧は弦麻の腕を指差した。
 きょとんと弦麻が不思議そうに指の差す場所に目をやる。
 見れば腕から白いシャツを染め上げるように赤く血が滲んでいた。
「あれ?」
 いつのまにとでも言いたげに、弦麻が首を傾げる。
 その様子に鳴瀧は深々とため息をつくと、傷に触らぬよう、血で固くなった袖をそろそろとまくりあげた。
 そこには擦ったような傷が、手首の辺りから肘近くまで走っている。擦り傷とは言え、決して浅くなく、血の量も多い。
「結構、深いな」
 丹念に傷を調べてから、鳴瀧は呟いた。
 肉が見えるとか、骨が見えるとかいうほど深いものではないが、完治には二週間以上かかるだろう。
「指とかじゃなくてよかった」
 そのケガを負った当の本人がのほほんと呟やく。
 そういう問題じゃないだろとツッコミたいのを必死でこらえて、鳴瀧は救急箱を取りにキッチンへと急いだ。この友人に言ったところで無駄だと長い付き合いで知り尽くしている。
「もうすぐ、試験だからさ。やっぱり利き腕が使えなくなると困るだろ」
 怒りをこらえる鳴瀧の様子に気付いたのか、自分の言葉をフォローするように弦麻が声をかけた。
「……何も言ってないぞ」
 救急箱を片手に戻ってきた鳴瀧はそれにむっつりと答える。
「言いたそうな顔してた」
 ……どうやら長い付き合いはお互い様らしい。
 黙々と腕の傷に包帯を巻いていると、ふと弦麻が呟いた。
「……あの子、大丈夫かな」
 その言葉に鳴瀧は手を止め、顔を上げる。
 あの子とは、こうして弦麻が怪我をするきっかけとなった三毛の子猫だった。小雨の中、ふらふらと歩いていた猫はそのまま車道に飛び出し、轢かれそうになったのを助けたのが弦麻だった。
 その後、猫はさっさと弦麻の腕から逃げ出すと、どこかへ消えてしまったのだ。
 恩知らずとはまさにこのことである。
「大丈夫だろ」
 それなのに心配そうに呟く弦麻に自分の心の中−−これだから畜生は(怒)をひとまず置いて、鳴瀧はそう答えた。
 安心させるような言葉に藍を含んだ瞳が鳴瀧をのぞきこむように見つめる。それからにこりと微笑んだ。
「そうだよな」
 ほっとしたように言う弦麻に鳴瀧も頷いてやる。
「さあ、もういいぞ」
 最後に包帯の先を裂いて結ぶと、鳴瀧は立ち上がった。
「替えの服を持ってきてやるから、着替えろ」
「別にいいよ。すぐ帰るし」
 包帯の巻かれた自分の腕を珍しいものでも見るような目で見ながら弦麻が言った。
 その頭をこつんと鳴瀧が叩く。
「阿呆。それでお前が風邪でもひいてみろ。俺が麻人に怒られる」
 弦麻には麻人という、良く言えばとてもお兄さん思い、悪く言えば超ブラコンの弟がいるのだ。ただでさえ、親の仇のように見られてる現状を、これ以上悪化させるのは正直御免被りたい。
「ああ、そうか」
 麻人の名が効いたのか、今度は大人しく弦麻も頷いた。持ってきた服を受け取ると、何のためらいもなく着ていた服を景気よくパーっと脱ぎ去る。
「……お前な」
 赤くなる顔を隠すように鳴瀧が手のひらで口許を押さえると、 「え……」
 弦麻も触発されたように顔を赤らめ、慌てて晒した肌を服を着込むことで隠した。
「……今更なに照れてるんだよ」
 道場でも着替えは一緒だし、それどころかあーいう仲でもあるのに、その今更な態度に弦麻がぶっきらぼうに尋ねる。本当に怒っているわけじゃない。もちろん照れ隠しの口調だ。
「別にそういうわけじゃない」
「そんな赤い顔で何が違うって……っ」
 きっぱりと否定する鳴瀧に、畳み掛けるように言葉を重なるのを困ったような顔で見つめてから、彼は自分の唇で弦麻の唇をふさいだ。
「………つまり、こういうことだ」
 すぐに唇を離すと、まだ少し赤みを残したままの顔で鳴瀧が言う。一瞬、唖然としたように鳴瀧の顔を見つめてから、弦麻はぐったりと、疲れたように肩を落とした。
「馬鹿だろ、お前」
「誰が馬鹿だ、誰が。好きなヤツの裸見て欲情すんのは当たり前だろ。……言わせるなよ、こんなコト」
 露骨なセリフにかあっと弦麻の頬が朱に染まる。
「……聞かせるなよ、そんなコト」
「言わなきゃわからなかった癖に……」
 互いをやりこめながら再び、二人の唇がゆっくりと重なった。

 さらりと衣擦れの音がして、弦麻の身体から服が滑り落ちていく。
 明かりの下に晒された肌を確かめるように鳴瀧の指と唇がたどっていく。
「……親父さんは?」
 微かに息を乱して、弦麻が尋ねた。
 一旦、唇を離してから、鳴瀧はあっさりと答える。
「例によって、出張中」
「あ、そ……」
 ふいに指先が胸に彩づく突起に触れ、息が弾む。覚えのある感覚が身体の中を這い上がってくるのを感じて弦麻はそっと息を吐き出した。
 その後を追うように唇がもう片方の突起を探り当てる。
 敏感なそこを苛まれ、弦麻の唇から艶めいた声がもれた。
「冬吾……」
 切なげに震える唇が自分を乱す男の名を呼び、しなやかに腕を絡ませる。
 その手をとって、鳴瀧は包帯の上から傷に口付けた。
「あんまり無茶してくれるなよ」
 心臓止まったんだからなとつけ加えるのに、 「お前みたいに…頑丈なの…が…止まるわけ…ないだろ」
 揶揄うような声が熱い息の合間からこぼれた。
「人の心臓を毛が生えてるみたいに……」
「違う…のか……あッ!」
 両脚の間で息づく自身をつかまれ、大きく身体を震わせる。形をなぞるように指先を動かすと、ぎゅっと瞳が閉じられた。
「弦麻」
 ささやくように名を呼んで唇へと口付けを落とすと、うっすらとその瞳が開いた。
 熱に浮かされ、うるんだ瞳に鳴瀧の姿が映っている。それを覗きこむようにして深く舌を絡ませた。
 再びゆるやかに瞼が降り、与えられる感覚に素直に反応を返し始める。
 一際高い嬌声を放って、鳴瀧の手の中に弦麻が精を吐き出した。
 荒く息をついて、委ねた快楽から素早く立ち直ろうとする身体の奥。決して普段、人の目に触れることのない場所へと鳴瀧は手をのばした。そこに指が触れた途端、怯えたような表情が鳴瀧を見つめた。
 それに気付いて、鳴瀧も慎重に指を這わせる。はじめは入り口を探るようにして、次第に薄紅色の蕾の中にゆっくりと指を埋めこんでいく。
 舐めたり、オイルか何か使えばいいのだろうが、一度やって以来、そうとう恥ずかしかったらしい弦麻が「今度したら絶交だ」などと子供じみた宣言を発令したため仕方なくこうして時間をかけて、ほぐしているというわけだ。
 痛いよりはよほどいいかと思うのだが、男のプライドというのも大変である。
「……そろそろいいか?」
 丹念に繰り返した後、鳴瀧が小さな声で尋ねた。訊かれるのも嫌だろうとは思うのだが、仕方がない。
 案の定。顔を真っ赤に染めて、ふいっと顔をそむける。それでも、微かに彼はこくんと頷いた。
 それを認めて、鳴瀧はゆっくりと自身を埋めこんでいった。


Web初掲載:2000/10/22
Web再掲載:2000/12/01



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